「文字を書くことが苦手」な子へのサポート

放課後等デイサービスに通っているお子さんの中には、“鏡文字を書く子”や“漢字や文字を 正しく書くのが苦手な子”、“学習に苦手意識があり書くこと全般苦手に感じている子”など、書字に対して様々な困難を抱えているお子さんがいます。 今回は、書字困難な子に対して、実際に放デイではどのような支援をしているのかお話ししたいと思います。

書字困難と学習障害(LD)は繋がっているの?

 

person holding on red pen while writing on book

まず初めに学習障害(LD)は、基本的には全般的な知的発達の遅れはないものの、聞く・話 す・読む・書く・計算する・推論するなどの能力に困難が生じる発達障害のことです。

学習障害(LD)には、読字障害(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)、算数障害 (ディスカリキュリア)といくつかタイプに分かれています。

読字障害(ディスレクシア)/読む能力に困難があること

正しく読むことが困難だと正しく書くことも困難なため、結果として「読み書き障害」と呼ばれることもあります。

  • 読み飛ばし、読み間違えや勝手読みなど文章がスムーズに読めない
  • 似た字「わ」「ね」、「シ」と「ツ」などが読み間違えたり、書き間違えたりする

書字表出障害(ディスグラフィア)/書く能力に困難があること

文字が読めても、文字が書けない場合もディスレクシアに分類されます。

  • 鏡文字を書く(6歳ごろまでは子供たち全般に見受けられることがあります。)
  • 漢字を正しく書けない(漢字の棒線が1本多いなど)

算数障害(ディスカリキュリア)

数の概念の理解や計算、考えて答えにたどりつく推論が苦手です。
また、数字の概念や、「÷」「+」などの計算式で使う記号を認識するのも困難です。

  • 数の概念が理解しにくい
  • 数の大きいや小さいが理解できない
  • 文字の書きが困難な子に対する支援

ディスレクシアの実例

ディスレクシアがベースの自閉症と診断された小学 3 年生の A 君についてお話をします。
A 君は、幼い頃から文字に興味を示さず、読み飛ばし・鏡文字・漢字を書く時に、辺とつくりの左右を逆にして書くことがありました。下記の写真が実際に A 君が書いた文字です。

本来「熱(ねつ)で寝(ね)ている」と書きたかったのですが、「えつでれている」と 記入していました。「ね」「れ」が形態的に似ているため、認識が難しいのかもしれません。

この写真は、アルファベットの a を鏡で書いていました。

鏡文字になる原因はいくつかありますが、空間認知能力が関与していると言われています。左利きであったり、左右の認識が弱いと鏡文字になることがあります。

そのため放デイでは、A 君の支援で取り組むプリントは下記のように工夫をしました。

  • 読みやすくするために A4 のプリントから A3 に変更
  • 読むときは線を引く
  • 書字に困難がある場合は、視知覚の認知能力を鍛えるビジョントレーニング

また、手先の不器用さが原因で書字が困難な場合は、手先を鍛える必要があります。 点つなぎやお手玉、紐通しなどで手先の器用さ、視知覚の認知能力の両方を鍛えることができます。

点つなぎは簡単なものから、複雑なものまでレベルが様々なので、その子の力 に合わせた指導ができオススメです。

ディスレクシアへの支援とその効果

A 君は、ビジョントレーニング方法としてお手玉を取り組みました。お手玉は、注視する力と動く玉を目で追う力を育てることができます。左右を認識することで、空間認知能力が向上します。

ただ、お手玉は低い年齢のお子さんが取り組むには十分ですが、ある程度の年齢で線結びな どのビジョントレーニングに切り替えると学習に活かすことができます。

A 君は、今でもアルファベットの a を鏡文字で書くことがありますが、ビジョントレーニングをすることで、鏡文字の頻度も減るようになりました。

そして、去年ウィスク検査を受け「読みの正確性に関しては自らエラーを修正する能力が向上し年齢 相応」「書字の正確性は年齢相応」と結果が出ました。

このことからもより早い段階で支援をすることで文字の認識能力を向上させることができます。早ければ早いほど苦手を克服しやすく、のちに苦労することが少なくなります。

グレーゾーンでの書字困難

ディスレクシアやディスグラフィアの診断がでていなくても、グレーゾーンや学習に苦手意識があると、全く書けないわけではなく書くことが難しいお子さんがいます。

IQ85の小学5年生の B 君は、学習面の心配「国語や算数の学習に飽きずに取り組む」というご相談で小さい頃から放デイに通ってくれています。

読み飛ばし、勝手読みがあり、漢字を書くのが苦手なため自分の名前も平仮名で書いてしまう ことがあります。筆圧の弱さや文字の形が崩れていることもあり、文字が読めないこともあります。

B 君の実際のプリント

枠からはみ出たり、学年相応の漢字を書けない、文字のバランスが悪いことがプリントから見受けられます。

学習の苦手意識の強さが少しでも緩和されて取り組みやすくするために、放デイの支援で取り組むプリントは下記のように工夫をしました。

  • その子が取り組める枚数のプリントを準備し、全部できたという自信をつける
  • 読みやすくするために A4 のプリントから A3 に変更
  • 文章読解の問題は、答えだと思う文章に線を引く→書きの負担を軽減
  • 文字を書かずに言葉で伝える

B 君以外にも学習の苦手意識を強く持っている生徒はたくさんいます。そのような生徒には上記の工夫を取り組み、今まではプリント 1 枚終わらなかった生徒も今では 1 枚終わらせるように なりました。

書字困難と支援のまとめ

書字の特徴として、以下の4つが挙げられます。

  • 筆圧が強すぎる、弱すぎる
  • 枠からはみ出る
  • 枠に対してバランスが悪い
  • 文字が崩れてる

(例)

枠からはみ出てしまうのは、目と手の協応運動が苦手、視知覚に弱さがある、先の見通しを立てるのが苦手、ということが原因として挙げられます。

書字困難の子には以下の3つ支援方法が有効的です。

  • 読みやすくするために A4 のプリントから A3 に変更
  • 読むときは線を引く
  • 視知覚の認知能力を鍛えるビジョントレーニング

学習に強く苦手意識がある子の場合は、以下の3つの支援方法が有効的です。

  • その子が取り組める枚数のプリントを準備し、全部できたという自信をつける
  • 読みやすくするために A4 のプリントから A3 に変更
  • 文章読解の問題は、答えだと思う文章に線を引く→書きの負担を軽減
  • 文字を書かずに言葉で伝える

書字に対し様々な困難を抱えているお子さんがいます。その子に合った取り組み方で少しで も困難を減らしていくことが大切です。

関連記事