自閉症をはじめとする発達障がいのあるお子さんは感情を表現するのが苦手で、自分の気持 ちや意見を言葉でうまく表現ができず困っている子がいます。
そのため言葉ではなく書いて気持ちを伝えられるようにするためのツールとして、気持ちシート を使用しています。
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気持ちシートとは?
支援員は気持ちシートを読んで「こんなことがあったんだね」「具体的にどんなことをしたの?」 などとコミュニケーションが取れるように促がします。
例えば、テーマが「嬉しい」のとき
(例)文の表現が得意なお子さんの場合
(例)感情表現が苦手なお子さんの場合
支援員は気持ちシートを読んで「こんなことがあったんだね」「具体的にどんなことをしたの?」 などとコミュニケーションが取れるように促がします。
学校で嫌なことがあり気持ちのコントロールができないまま来所したお子さん、思春期のお子さ んの場合は「そんな気持ちない」「分からない」で書けないことが多いです。
そのような場合は、その時の感情に合ったテーマや本人が書きやすいテーマに変更したり、今 日の出来事や、相互理解を深める質問カードを用いて話題を切り替え、その中での感情を聞き出します。
例えば、相互理解を深める質問カードを用いた気持ちシートの場合 自閉症と境界知能がある中学1年生の B 君に「相手から言われて嫌な気持ちになる言葉はな んですか?」という質問カードを提示すると、「数学と英語。この言葉を聞くだけで嫌な気持ち になる」と答えてくれました。
そのため支援員が「それは学校の授業のこと?」「嫌な気持ちになったらどうなるの?」と更に 内容を掘り下げ、一緒に気持ちシートの内容を確認しながら記入をしていきます。
その他には、気持ちを表す言葉と自分の気持ちが一致していないお子さんもいます。
この文面だと、気持ちを表す言葉が「夢中・嬉しい・楽しい」と捉えることができます。本人に 「何が嬉しかったか」「夢中になってゲームをしたのか」「それは楽しかったか」を聞き、その中で どの気持ちが一番強いかを確認して、気持ちシートの内容を一緒に書き直していきます。
(指導員のによる訂正は赤字)
一人で文章を考える事や気持ちを表す言葉と自分の気持ちを一致させることは難しいため、 支援員と一緒にその時の気持ちを思い出して、一緒に文を考えていく。一緒に確認していくこ とで、感情の理解を深めることができます。
どんな子が使っているのか?
主に自発的な発言が少ない子や感情理解が難しい子が使用していますが、コミュニケーショ ンを取るのが得意でも自ら悩みを打ち明けるのが苦手な子・感情整理が苦手な子も使用して います。反対に、嬉しいことや悲しいことも自ら話してくれる子はシートを使うことは少ないです。
どんな時に使うのか?
学習を取り組む前に気持ちシートを自分で記入してもらっています。書字の困難がある子や書き方が分からない子、自分の気持ちを文字に起こすのが苦手な子がいるため、その場合は お話を聞いて支援員がシートに記入をします。 また感情の理解が難しいお子さんには、気持ちを表す言葉を理解するための線結びも行っています。
実際に使用してみて
IQが、境界域に位置し、自閉症傾向があるの高校 2 年生、A 君のお話をしたいと思います。
中学生までは支援級でしたが、高校は通学もできる通信制の高校に入学をして現在は、普通級に在籍しています。
言葉のキャッチボールが得意ではなく、すぐに会話が終わってしまうため保護者様からは「キャ ッチボールが続くように、コミュニケーションを楽しんでほしい」というご要望があり放課後等デイサービスを通い始めました。
自発的な発言量は少なくありませんが、話しかけても「へー。そうですか」や、問いかけに対し 全く別の内容が返ってくることがあります。会話のキャッチボールが長く続きしないため、気持 ちシートを導入してコミュニケーションを図りました。
実際に A 君が書いた気持ちシート
実際に A 君が書いた気持ちシート実際に A 君が書いた文章に支援員が付け加えた気持ちシート(支援員は赤字)
このように、支援員が話を聞きながら文章を付け足すことで、文章構成やコミュニケーション能 力の強化ができるよう支援を行っています。
気持ちシートを使い続けて
支援員が補助に入り、具体的に気持ちシートを書くように取り組んできた結果、文章がまとまる ようになってきました。
それでもまだ接続詞を付け忘れることはありますが、以前よりも読みやすくなりました。
そして A 君の最終目標は「誰かに伝えるための文章の作成」のため、現在はステップアップとし て作文形式の「最近の出来事シート」も導入しています。
最後のまとめ
気持ちシートは、お子さんの気持ちの整理と感情を理解するための取り組みができます。また、 文章を書くことに繋げていくことができるので文章力・作成能力の向上を図ることも可能です。
気持ちを伝える方法は話すだけじゃない
書いて気持ちを伝える方法もあるということを知る機会にもなります。
色々な方法でお子さんが気持ちを伝える力を身につけていけることがとても大切です。
そして気持ちシートを使うことで、生徒の伝えたいことの整理ができ、その後の支援内容を考えるための一歩へと繋がっていきます。