自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の特徴

放課後デイである日、「先生は任天堂スイッチ持ってないな」
と、生徒に話したところ「誕生日プレゼントに買ってもらえばいいんだよ!」と言われました。
私は多分、子どもたちに友達だと思われています。

今回は、自閉症のある子どもたちが実生活の様子について紹介したいと思います。得意なことや不得意なこと、凹凸の無い子供たちと異なる点を紹介し、自閉症について理解が深まれば幸いです!

自閉症の視点の理解

group of cows

筆者は台湾で心理学を学んでいました!台湾に移住した当時、言語の違いからなかなか自分で発言できないこと、自分の考えを中国語にして相手に伝えることができなくて塞ぎ込んでいた時期があります。

知識の無かった当時の私は「私って自閉症なのかも」と考えていたほどです。恥ずかしながら無知だったために字面から自閉症を解釈してたんですよね。

ですが、学校の授業で自閉症にまつわるレポートを作成するためにテンプル・グラディンさんの本を読みました。彼女は自閉症を抱えながら、その優れた空間認識能力によって家畜施設を設計した方です。

「彼女は自閉症であったからこそ、その素晴らしい家畜施設を設計できた」と言います。

また、彼女自身の自伝であったため、自閉症と共に生きる方々の視線を知ることができました。

ですのでこの記事ではまず、私自身が学んだことを交えて自閉症の特徴と原因を紹介したいと思います!そして、学術的で少し堅い診断基準に関する記事も別に準備しております!ですので、診断基準も知りたい場合はそちらも読んでみてください!

IQと得意なこと

IQの平均値が100です。90~110が普通、IQ120になると東大生レベル、130以上になるとそりゃもうめちゃめちゃ頭の良い人たちにあたります。

自閉症の子供たちの約80%が知能検査によってIQが70未満になります。

IQが70未満の場合は自閉症と診断され、その中でIQ70以上と知能指数が高い場合は高機能自閉症・アスペルガー症候群と診断されます。もちろんIQだけで自閉症スペクトラムと診断されるわけではありません。

自閉症を抱える方は抽象的なことを理解するのが難しいと言われます。

「抽象的」がめちゃめちゃ抽象的なのですが、範囲が広い状態です。「これくらい」や「適当」、「大体」といった具体性のない説明は伝わりにくいのが学習支援をしている今でも感じます。

また、幼い頃は触れないものを理解するのが難しかったと自閉症の方の自伝に書かれていました。靴下や鉛筆など、手で触れることができるものは理解しやすかったそうです。それに対して、楽しいや大きいなどの形容詞、遊ぶや作るといった動詞など触れることのできないものが理解が難しかったそうです。

それに対して得意なことは、視空間的スキルを要求される問題、例えば積み木模様課題や組み合わせ課題は良い点数を取ることができます。学習支援の場でも、自閉症の利用者で作文は苦手だけど、作図が得意なことが分かります。

社会性

fiver person running on the field near trees

赤ちゃんは早ければ生後3ヶ月くらいでお母さんに対して愛着行動を示します。乳児の多くはだっこ、お母さんがいなくなればお母さんを探す仕草を見せるのが一般です。

ですが、自閉症を抱える子供の場合はこの早期の愛着がほとんど確認されません。自分の家族と遊ぼうとせず、指さしたり、目を合わせたり、遊び道具を他の子と分け合ったりといった行動も稀です。

自閉症を抱える子供が大人に会ってから別れるまでの様子を観察する研究の報告によると、バイバイなどの自発的な挨拶を言葉で言わなかったり、ほほ笑みよって大人と交流しようとしたりする様子もあまり観察されませんでした。

上記のは教科書の話ですが、人懐っこく周りの人と交流したいのになかなか話が噛み合わないという子供たちも今までのボランティア活動や実習先、学習支援の場で見てきました。

相手のペースや反応を見ないで自分の好きな話をする様子や、しかけるだけ話しかけて相手の返答を待たないとい様子がよく見受けられます。

学習支援の場で利用者に「先生これってなに?!!!!!」とハイテンションで聞かれたので、同じテンションで「こうゆうことだよ!!!!!!」と返しても「ふーん」と軽く受け流されることもしばしばです。

え、さっきのテンションどこいった?と困惑することもありましたが、特性だもんね、と温かく見守ってます。

目が合わない

white pig with yellow knit cap

目が合わないは自閉症で観察される代表的な様子かと思います。この目が合わないは、顔をそむけたり体が自分に向かなかったりをイメージするかと思いますが、実際には焦点が合わないことを良く感じます。

顔はこっちに向いているのに視線は目の少し下や目の付近全体を見ていることが多いです。

相手のペースを理解するのが難しい、相手の感情を理解できない、目が合わないといった様子は脳のミラーニューロンが関係しているのではという説があります。

ミラーニューロンとは、相手の行動を真似したり、相手の感情を理解したりする脳神経です。

実際に、自閉症は環境的要因よりも脳や遺伝的要因が支持されていますが、自閉症を発症するメカニズムは明確には証明されいません。

反復的、儀式的行動

boy sitting on white cloth surrounded by toys

発達障害のある子供たちを中心にお世話をする幼稚園に、大学時代実習に行きました。そこに重度の自閉症がを抱える園児が居たのですが、普段は先生の絵本の読み聞かせや積み木などのおもちゃにもあまり反応しません。

その子は他の園児よりも体は大きく、力も強いなかよく床に寝転がって癇癪を起こしていました。また、癇癪を起こしていない機嫌の良い時は立って一点をクルクル回るのをよく覚えています。

その幼稚園の先生は「自閉症の子にこの行動多く見られるよ」と教えてくれたのでよく覚えています。

私は今、放課後デイで学習支援をしているのですが、似た形でクルクルする様子を自閉症の利用者で見かけます。その利用者は3mほどの直線距離を何度も歩いて回ります

教科書では他にリズミカルな動き、体をゆする、飛び跳ねる、手をたたく、つま先歩き、手遊びといった自己刺激行動が他にも報告されています。

感覚を刺激することによって自分を落ち着かせるためや、感覚の足りない部分を補っているのです。

強いこだわり

toddler holding assorted-color Crayola lot

自閉症を抱える方々は変化をあまり好まない傾向があります

生活の日課や環境が変わると混乱してしまうこともしばしばです。違うカップで牛乳を出したり、家具の置き場所を変えたりすると、幼い場合は泣き叫び癇癪を起こしてしまうこともあります。

この強いこだわりは自閉症を抱える方々の全般に見られます。

遊ぶときは遊具を陳列させたり部屋にあるものを使って複雑な図形を構成させたりもします。また、成長すると、電車の運行表や地下鉄の路線図数字の列に夢中になることもあるようです。

「ほとんどの時間、私は火星に降り立った宇宙飛行士の心境なのです」と自閉症の方の自伝にはあります。

大多数の方と自閉症を抱える方とでは世界の捉え方が大きく異なるのかこの一言から分かります。無秩序に感じる世界のなかで、儀式的行動や強いこだわりをもつことで、法則性のある世界として認識しようと努力しているのです。

好きなことに対する素晴らしい集中力

自閉症があるか無いかに関わらずある分野に特に長けている子供たちを見かけますよね。

代表的な例であれば電車がありますが、深海魚や歴史、きのこにすごく詳しい子供たちもいます。また最近でも、学習支援の場でも好きなことに対する素晴らしい集中力を目の当たりにしました。

すごく人気なアプリゲームがあるのですが、主要キャラでも24人居ます。その時点で覚えるのが大変そうですが、名前は全部カタカナです。

カタカナの序列を見ると薬品の名前かな?と思ってしまうのですが学習支援の利用者らはそのカタカナだけでなく、24人の名前、身長に誕生日まで覚えていました

私はカタカナを覚えるのが苦手で、あるキャラクターの身長だけを覚えていました。(身長だけ覚えてるのも癖が強めなんですが)

「○○ちゃんが身長156㎝のキャラクターのファイル持ってたよ!」と伝えると、

「(キャラクターの名前)だね!」と答えてくれました。

Google大先生にお尋ねしたところ、身長を言い当てた利用者は見事ご名答でした。学習支援をしているので、利用者を机に向かうことを促す日々です。

ですが勉強は彼らにとって楽しいものではありません。自尊心を傷つけないためにも勉強のみならず得意な分野も伸ばし、勉強は得意な分野があまり上手くいかなかったときのセーフティーネットの役割になればいいなと学習支援を続けています。

マイワールド

boy holding block toy

自分の中に世界がある自閉症の子は多いかと思います。

自分の中だけで通じる言葉で話したり好きなキャラクターになりきったり好きなキャラクターが自分の日常生活の中に居たりする情景が自分の中にあるのです。

自閉症でない子供たちにも架空の友達や、架空の友達イマジナリーフレンドとの会話プライベートスピーチも観察されます。

ですが一般的には中学校に上がる頃には自然になくなるものです。

私が普段よく担当させてもらう自閉症の利用者は中学校に上がっていますがプライベートスピーチがよく見受けられます。

イメージとしては、彼女の中に自分の世界が広がっていて、その中にまた彼女自身が居ます。ですので、マイワールドの中にいる状態で話しかける場合は、何度か声をかける必要があります。

架空の友達や、はたから見れば独り言、自分の中の世界があることは悪いことではありません。独り言に見えるプライベートスピーチもそれがあることによって社会性を養おうとしているためです。

感覚過敏

boy in blue long sleeve shirt standing beside brown wooden table

視覚や聴覚が敏感で、肌ざわりにこだわりがある自閉症の子供たちは多いのでは無いでしょうか。

視覚においては周りの人はなんとも感じない光でも、刺さるようにまぶしいと感じることがあるそうです。

また、聴覚に優れている子が多いのも有名な話です。スーパーや街中で耳を押さえている子供を見たことは無いでしょうか?もし見たことがあれば、もしかしたらその子は耳が特に良いために普通の人では何気無い音でも大音量に聞こえてしまうため困っていたのかもしれません。

自閉症を抱える方の自伝によると2、3歳くらいのときの自分の耳について「それは、壊れたマイクのようだった。関係あろうがなかろうが、そんなことはおかまいなく、耳をつんざくような圧倒的なボリュームの音が耳を通して響いていた」と表現されています。常にライブみたいな音量がガンガン耳に入ってきたらそりゃ辛いですよね。

肌触りに感してはコロナ禍のご時世マスクの肌ざわりが苦手でできないという子供たちが一定数存在します。

そんな子たちはマスクができない代わりに扇子で対策をしているそうですよ。また、綿の素材の洋服はやすりが肌に当たってるように不快と表現する子供たちも居ます。

自閉症を抱える方々と、一般の方々とでは感覚の働き方が異なるため、視覚や聴覚、そして肌ざわりでの差が生まれるのです。

まとめ

いかがだったでしょうか?

ご自身のお子さんだけでなく、他の子たちも「同じような行動がある」、や「似たような得意不得意」があるんだ、と実感してくだされば幸いです。

自閉症スペクトラム障害の診断方法や、放課後デイでも実践している支援方法については「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断基準」にて紹介しています。より理解を深めたい方は、ぜひこちらも読んでみてください!

それではまた🦉!

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