発達障害のある子どもたちが年々増加していると言われている実態を共有していきたいと思います!
Table of Contents
発達障害のある方は年々増えてる?
最近の発達障害に関する記事には「発達障害は年々増加傾向」と見かけます。
実際に人数として増加傾向にあるのですが、ただ「増加している」は言葉足らずです。
ではなぜ、発達障害が増加傾向にあるのか数字と背景に基づいて見ていきたいと思います。
発達障害者数の推移
それではまず、令和元年(2019年)に文部科学省によって公表された、小中高における発達障害者数の推移を見ていきたいと思います。
(別紙2) 令和元年度 通級による指導実施状況調査結果について を基に作成
少子高齢化の進む日本では、年々出生者数が減少しています。にも関わらず、このグラフでは通級の利用者数が増加しているのが分かります。
教育法によって定められている小・中、高等学校の統括は文部科学省によってなされています。ですのでこのグラフは、文部科学省が把握している校内での通級を利用している発達障害者数になります。
通級を利用していない発達障害を抱える生徒も存在しているので、発達障害の実際数はグラフよりも多くなると言えます。
(別紙2) 令和元年度 通級による指導実施状況調査結果について を基に作成
このグラフは通級の毎年の利用者数を100%として、各種障害の割合によって色分けされたものになります。
このグラフから分かるのは、後述する発達支援法が施行される2005年の翌年の2006年から注意欠陥多党制障害(ADHD)、学習障害(LD)、自閉症(ASD)も支援対象として含まれるようになり、年を追うごとに割合が増加しています。
2019年には言語障害の割合が四分の一にまで減少し、その他の障害が四分の三を占めるようになっています。
発達障害が増加傾向にある原因
以上のグラフの結果から見ると発達障害は増加傾向にあると言い切れそうですが、実際には発達障害が認知されるようになり、診断数が増えたから発達障害が増えたように見えます。
ですが、絶対数が増えたわけではありません。
2004年に発達障害者支援法が国会を通過し、2005年から施行され身体障害、精神障害、知的障害に加えて発達障害も支援の対象となりました。
ですので、日本国内で発達障害の支援が行われるようになって2021年現在では、16年しかありません。そして、法が制定されれば自ずと発達障害に対する認知度が高まり、検査と診断もされるようになります。
コロナ禍の昨今では、毎日午後の3時に東京のコロナ陽性者数が発表されていますよね。そして、検査数が少ない曜日は陽性者数が少なく、検査数の多い曜日は陽性者数が多くなる傾向があります。同様のことが発達障害でも言うことができます。
2004年の発達障害支援法が制定される以前に発達障害が存在していなかったかというと、そうではありません。存在はしていたものの、障害として認知されていなかったことが昔は発達障害が少なかったといわれる理由として挙げられます。
また、発達障害をはじめとする精神障害が認知されるようになったことにより研究や調査広まり、診断基準が確立したことにより、発達障害の診断が増加したことも増加原因の一つとして挙げられます。
発達障害支援法の概要
原文は文部科学省が公表していますので、原文が気になる読者様は文部科学省にてご確認ください。( https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/main/1376867.htm )ですのでここでは、文部科学省によって公表されている発達障害支援法の要約を紹介したいと思います。
第一章(発達障害支援法の目的)
発達障害者が円滑な社会生活を送れるように促進し、発達障害の症状の発現後できるだけ早期に発達支援を行う。学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定めることにより、発達障害者の自立及び社会参加のためのその生活全般にわたる支援を行う。
第二章(発達障害に含まれる障害)
自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢で発症するものとして定める。
発達障害グレーゾーンの実例
私は現在放課後デイサービスにて学習支援をしていますが、以前は塾講師をしていました。そこで塾で勉強を教えている際、発達障害のグレーゾーンにある子どもたちは案外多いことに気が付きました。ですので、グレーゾーンとして見られた一例を紹介したいと思います。
担当していたある生徒は定型発達のクラスに在籍し成績は平均以上でした。ですが、数学の単純な計算ミスと符号ミスや文章の読み間違えが他生徒より多く(単純ミス)、模試でも常に10点前後計算ミスによる取りこぼしがありました。
長時間の集中が難しかったり(集中力が持続しない)、真冬でも裸足であったり(体温が高い)、忘れ物が多く、視覚優位な特徴がありました。
もう一人の例を紹介します。その生徒は学習時間と成績がなかなか比例しませんでした。入塾当時、真面目な性格とは裏腹に模試での国語の点数は一桁でした。
特徴として、複数回同様のことを説明しても同じ箇所を間違える傾向がありました。とても真面目な生徒だったので塾での授業以外の自習にも頻繁に足を運び、勉強の方法の指導もこまめに受けていたのですが、結果がなかなか伴いませんでした。
発達障害をはじめとする精神疾患の大前提として日常生活に支障が出るか出ないか、苦痛が伴うか伴わないか、かが重要な分岐点になります。支障が無いと判断するのであれば、(軽度の支障:忘れ物が多い、単純ミスが多い、知覚過敏性など)精神疾患とは診断されません。
ですが、先に上げた二人の生徒が現状苦痛と感じ、検査と診断を受けたいとなれば発達障害の診断結果が出る可能性があります。
同じ状況にある子供たちは日本でも沢山存在するはずです。そしてそのような人々に発達障害が認知されることで、検査と診断を受ける子供たちが増加し、その結果が「年々発達障害が増加傾向にある」になるのです。
まとめ
いかがだったでしょうか?社会的にも発達障害の理解が深まり、認知されてきたために「発達障害が増加している」と言わるようになりました。
マイノリティ(少数派)がより理解されるようになったことはとてもステキなことだと思います。多様性の一つとして、「普通」という呪縛が少しでもなくなることを願います。それではまた🦉!