気持ちのコントロールが苦手な子への指導

自閉症とWISC検査でIQ境界域に位置している中学1年生のB君を例にお話しします。

自閉症と WISC の検査で IQ 境界域に位置している中学1年生の B 君。彼は、小学生の時は支援級 でしたが、中学生になってから通級に通っています。

勉強にはあまりついてい けていませんが、友人関係は良好です。

学校側も宿題の量を個人のできる量に合わせるなど配慮してもらいサポートしてもらうことで、上 手く通級に通えています。

ご家庭から、元々小学生の時に学習についていけてないというご相談があり、放課後等デイサー ビスを利用し始めました。2 年間通った今では、元々あった癇癪を起こすということが少なくなっ ていきました。今では「気持ちのコントロールができるように」、「コミュニケーションを取れるように」という目標で放課後等デイサービスに通っています。

苦手意識が強い

boy sitting while holding electronic device part

B君は電車が好きでよく電車の話をしています。彼は、自分の好きな物に対しては高い集中力が発 揮されますが、嫌いな物事に対しては拒否感が強く出てしまいます。

書字の困難もあり学習プリントを 1 枚ですら書くことは本人にとってとても大変なことです。文章 読解の問題を行う時は、口頭で答えたり、答えだと思う文章に線を引いてもらい、書く文字数が 減るように工夫をしています。

それでも難しい問題や苦手な課題に直面すると気持ちのコントロールが難しく、フードを被り机 の下に潜ってしまうこともあります。

支援員が声を掛けても返答がない時もあり、5 分以上机の 下から出てこないこともあります。

気持ちのコントロールが難しいとき、どう対応しているのか?

woman sitting leaning forehead on knee

実際にB君が気分を損ねた時のお話をします。

いつものように元気に来所してくれた B 君。支援内容は普段「気持ちシート・国語・数学」を行っ ていますが、この日は「気持ちシート・国語・タイピング」を行いました。

支援時間で初めて行うタイピング。「タイピングは学校でもやっているよ!」と支援内容にとてもやる気を示していて、学校で使ったことがあるゲーム形式のタイピングを行いましたが、実際思うよ うにローマ字入力をすることができず、気持ちが落ち込んでいってしまいました。

それから口を閉じてしまい、支援員が「タイピングが嫌だった?」「時間が短くて打てなかった?」 と聞いても返事をしてくれなくなってしまいました。

塞ぎ込んでしまう理由は様々で、「やりたいという気持ちはあるけど出来ない」「出来ないことに取り組むのがすごく嫌」「出来ないことに対してパニックになってしまった」「そのパニッ クな状態をどう対処すればいいか分からない」とその子によって異なります。

フリーズしてしまった理由は当人にしか分かりませんが、当人も分からない場合もあります。その時には一度冷静になってもらうために、クールダウンしてもらうことが手段の一つとして有効で す。

「少し落ち着いたらお話しを聞かせてね」と声をかけ、その子の様子が見える位置でそっとしま す。実際にクールダウンの時間を設けた後、 塞ぎこんでいた状態から少し立ち直り、携帯の画面に文字をタイピングし気持ちを相手に伝えることが出来ました。本来自分の気持ちを伝えるのが苦手なB君にとって、携帯で自分の気持ちを相手に伝えることができたのは大きな進歩です。

選択肢を与える

person holding white printer paper

何かを成し遂げるのに方法はひとつではありません!
自分で決めることが大切です!
自分で決めたことを成し遂げることができたら自信に繋がります

B 君は携帯で気持ちを伝えることができたので、支援員はB君に「これからどうしたい?」「何が 嫌だった?」という開かれた質問する方法ではなく、『アルファベットのマグネットを用いてロー マ字を勉強する』、『タイピングでローマ字を勉強する』、『タイピングをしたくない』、『そ れ以外』と4つの選択肢を紙に書いて提示しました。

すると、携帯で「タイピングが嫌だった」と打って見せてくれました。

B 君にとって言葉にすることは苦手であっても、文章にすることは得意です。このように自閉症の子は言葉で伝える事が苦手な子がいますが、気持ちの伝え方は言葉にする以外でもいろいろあります。携帯でタイピングする、もしくは紙に書くなど、他の方法で気持ちを伝えることもできるの だと本人が自覚するのはとても大切なことです。

気持ちを伝える大切さ

yellow and white round plastic toy

今回の場合は「自分の気持ちを上手くコントロールする」「自分の気持ちを上 手く相手に伝える」ことが目標になりなす。ですので、自分の気持ちをこちらに伝えてくれたことを褒め、「それでいいんだよ」「ちゃんと自分の気持ちを言えたね」とB君に伝えます。

今後、学校生活の中では勉強だけでなく、友人関係など様々な場面で難しい場面に直面するはずです。その時に自分で対処できるようにするためするのが私たちの支援です。

だかこそB 君少しずつ自分に自信を持てるように支援をしていきます。 今でも気持ちのコントロールがうまくいかず、机の下に潜ることはありますが、潜りながらも、少 しずつですがお話を するなど成長も見受けられるようになりました。

B君は、苦手な課題の時に 気分を損ねるか、ふざけて誤魔化すことがあるので、ふざけた時は真面目なトーンで「今何をすべきか」をしっかりと伝えるようにしています。特に自閉症のお子さんは、相手の気持ちや状況を理解するのが苦手な傾向があるので、“良いことは良い” “悪いことは悪い”と ハッキリ伝えることも大切です。

気持ちのコントロールが難しいときの支援員の対処法

man and woman holding hands on street
①気持ちのコントロールが難しそうだと感じた時は、気分転換のため別の課題に変える。
②個室に移動する。
③生徒が見える場所で一度そっと見守る。(クールダウン) 
④「何が嫌だったのか」「どうしたいのか」生徒の話を聞く。

②は、学ぶ環境を変えることで一旦生徒の気持ちをリセットする効果があります。

④は、自分の気持ちを相手に伝えることが難しいお子さんにはまず「はい」か「いいえ」で答え れるような簡単な質問が効果的です。簡単な質問で答えれるようになったら、次は「なぜそうな の か」より詳しく掘り下げて生徒の気持ちを引き出すことができるとよいりよいです。

最後にまとめ 

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気持ちのコントロールが苦手な子への指導の方法は一つではありません。

その子にあった表現の仕方が必ずあるので、その子にあった、その子なりの気持ちの表現の仕方をこちらが見つけてあげ、それをその子自身ができるように支援していくことがとても大切です。

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