注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD) の特徴と診断基準

今回はADHDについてです。

一般的に認知されてきたADHD

two toddler playing letter cubes

ADHDという用語は、保護者の方にとっては馴染みのある言葉になってきているかと思います。また、最近では心の健康が重視されるようになったために、精神疾患の病名が一般的に普及してきました。ですが、それと同時に言葉だけが先行して本来の意味とは異なるように使われることも多くなってきています。

最近とてもビックリしたのは「自分最近ADHDなんだよね」という友人の発言です。

うーん、ツッコミどころが多すぎますね。

まず、”最近”が引っかかります。今日落ち着きが無くて、一週間後は大丈夫!とかそんなに不安定のものではありません。

その場合はとりあえず寝るかなにかして休息をとってください、きっと疲れているだけです。また、友人も20代なのですが、色濃くADHDが見受けられるのは幼少期からです。20代になって唐突に現れるものではありません。

読者の皆さまには友人のよう不完全な知識を身につけてほしくないので、できるだけ分かりやすく、そして定義に沿って注意欠如多動性障害(ADHD)について解説していきたいと思います!

ADHDにみられる特徴

授業中や食事中など、じっと座っていることを要求される状況下で自分の行動をコントロールすることに困難を感じます。つまり、静かにすることを要求されると、動いたりしゃべったりを抑えるのが難しいのです。

ですが、自由時間など行動に制限が少ない状況下では、ADHDおとそうでない子の区別はあまりできません。みんな自由に動き回れますからね!

また、ADHDの子供の多くは同級生らと友人関係を築くことがあまり得意ではありません。それは、ADHDの子供達の行動が周囲の人からすると攻撃的で、侵襲的と感じとられてしまうことがあるからです。

その他にも、その多動性に対して周りが疲れていることを感じ取ることができなかったり、友人が黙っていると攻撃されたと受け取り自分からも攻撃してしまったりと、誤解釈してしまう部分もあります。

とても興味深かった思った実験を紹介します。

ADHDを抱える子供たちのグループと、そうでない子供たちの社会性を観察するために、

グループにゲームをしてもらい、ゲームの中で何を目的として遊ぶのかを評価する実験がありました。ADHDを抱えていない子供たちはルールに沿ったフェアプレーを目標にしていたのに対し、ADHDを抱える子供たちのグループは、問題を起こし、優位に立ち、自分を誇示するなど、テンションが上がることを目標に遊んでいることが分かりました。私も実際にADHDの子供たちに学習支援を行う際に手を焼いていたのですが、この実験を知りADHDの一つの特徴としてとらえることができるようになりました。

ADHDを抱える子供たちは、社会的に正しい行動というのは頭では分かっているのですが、その知識を行動に移すのが難しいという傾向があります。

ADHDの診断基準

man in white dress shirt and black pants

・以下の症状が7歳以前に存在している

・以下の症状が生活のなかで二つ以上の場所(例えば学校や家庭)で存在する

・社会生活や学業、または仕事場において支障をきたしている

・以下の症状が統合失調症や不安障害、気分障害など他の障害によるものではない

・以下に挙げる不注意多動性‐衝動性のどちらかもしくは両方が当てはまる

・次の不注意の症状のうち、六つもしくはそれ以上が少なくとも6ヶ月持続

不注意:不注意な間違い、持続的な集中の困難、話しかけられた時に聞いていない、指示した通りに動けない、課題や活動の優先順序を立てられない、精神的な努力を持続させることを嫌う、物を無くす、外からの刺激で気が散る、忘れっぽい

・次の多動性‐衝動性の症状のうち六つまたはそれ以上が少なくとも6ヶ月持続

多動性:椅子の上でもじもじする、座っていなくてはいけない状況で席から離れる、不適切な状況で走り回る、静かに遊ぶことが出来ない、落ち着きが無い、しゃべり過ぎる、人の話を聞き終えず自分の質問をする、列に並び順番を待つのが難しい、他の人の邪魔や妨害をする。

ADHDの生物学的原因

painting of handprints

次に、何が原因でADHDが発症するのかを説明していきます。幼少期から発症することからも分かるように、遺伝的そして神経学的要因が支持され、大きいとされています。

大人になってから発症するのであれば、生きている過程の環境の要因によって発症したため、心理的な原因が多く展開されるます。ですが、子供の場合は様々な環境に接する機会がまだ少ないなかで発症したということは、遺伝的要因が大きいとされます。

遺伝的要因:親がADHDを抱えている場合、約半分の子供がADHDの傾向を示します。また、遺伝子が同じである一卵性双生児に対する大規模な実験においても一方がADHDを抱えている場合7割から8割も同様にADHDを抱えていると結果が出ています。このことからも、ADHDは遺伝傾向が大きいとこが分かります。

神経学的要因:ADHDを抱える子供たちの脳機能において、前頭葉の働きが低いことが報告されています。前頭葉は集中力や思考、そして人間らしい情緒などをつかさどります。(思春期にイライラしてしまう脳科学的理由で前頭葉の説明もされているので参照してみてください)また、前頭葉の働きが低いため、行動抑制が難しいという報告もされています。

出産期・出産前の要因:ADHDを誘発する因子としては、低体重出産があります。低体であるということは、発達が不十分であることが分かり、先ほど説明した前頭葉の発達にも関連付けられます。ですが、低体重であった=ADHDを抱えるわけではありません。低体重出産であったことが、要因の一つとして考えられるまでです。

ADHDの原因は多様であるため、分からないことが多いですが、妊娠中の母体のニコチン摂取は胎児のADHDを誘発することは明確に報告されています。ADHDを持つ子供の母親の22%が妊娠中にも一日ひと箱のタバコを喫煙していたようです。母親の喫煙は成長しつつある胎児のドーパミン系に影響を与え、結果として行動抑制の欠如や多動性を引き起こすのです。

ADHDの治療

smiling boy wearing white crew-neck t-shirt during daytime

ADHDは風邪のように治療したから無くなるというものではありません。疾患として分類されますが、特徴の一つでもあります。ですので、ADHDは一生付き合っていく特性です。そのなかで治療の目的は、生活で不便になる部分を補い、快適に生活できるようにサポートすることです。

それでは実際、どのような治療法がADHDの治療で最も有効であるかを観察する実験について紹介したいと思います。治療法を①薬物療法のみ②心理療法のみ③薬物療法+心理療法、の3組に分けて、どのグループが最も効果が現れたかを評価しました。

その結果、③薬物療法+心理療法が最も効果が表れ、対人スキルの改善も多くみられたようです。よって、ADHDの治療には薬物療法と心理療法を組み合わせるのが最も有効といえます。

このなかで使われた心理療法は何かというと、ポイント制です。適切な行動を取ることでポイントを稼ぎ、星を貯めていくという方法です。そしてその星が一定数貯まると、他のプレゼントと交換することができるシステムです。

このポイント制で重要なのは、何をすればポイントが貰えるか明確にすることです。このときは貰えるけど、このときでは貰えないと条件が不安定であると子供たちも混乱し、学んでほしい行動が身に付きずらくなります。

ですので例えば、授業中1時間出歩かなければ1ポイントは明確な条件といえます。「集中できたら」や「頑張れたら」というのは、個人によって捉え方が違うので、子供たちも混乱してしまいます。ですので、曖昧な表現になってしまいそうなときには、例えば勉強においてならば「頑張れたら」は「プリントを一枚解き終わったら」と具体的に置き換えると伝わりやすくなります。

また、ポイントは子供の見ていないところで張るよりも、子供自身で張ったり、子供が見ている状況下で台紙に張る法がより達成感を与えることができます。

まとめ

いかがだったでしょうか?すでにご存じであったこと、この記事を通して新たな発見やADHDのある子どもたちのことをより理解できたら幸いです!それではまた🦉!

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